七彩マネキン物語

第12話...ビジュアルプレゼンテーションとマネキン

1970年代後半、百貨店のリニューアル旋風(リモデルとも言う)が全国的に巻き起こった。アメリカの百貨店の成功事例がモデルとなり、そのノウハウが導入された。リニューアルの目的は、いかに集客力を高め、購買に結びつけるかであった。そのために「売場」にエキサイティングでエンターティメントな要素を持ち込むとともに、商品を見やすく選びやすく整理整頓することが大切とされた。そのシーズンのファッションステートメントやライフスタイルをビジュアルに訴求するディスプレイが、ウインドーはもとより、メインステージや売場の導線に影響をもたらすサブステージで展開された。陳列と言う概念から、積極的に訴求する意味合いを持ったプレゼンテーションという用語が一般化したのもこの頃である。こうした傾向は1980年代に引き継がれた。さて、こうした変化の中でマネキンはどのようなポジショニングを確立しただろうか。

マネキンはビジュアルプレゼンテーションに不可欠な構成要素と位置付けられ、その役割は高められた。ドラマティックな演出やファッショントレンドのトータルな表現に、リアルマネキンが積極的に使われた。1970年代半ばから広がったライフスタイルマーチャンダイジングのシーン展開にとって、ターゲットのイメージに対応したマネキンが求められた。例えば、キャリアウーマンタイプの婦人マネキンや、ニューファミリータイプのマネキン、ドウスポーツマネキン等、七彩も次々と新作を発表した。

この頃の百貨店のディスプレイは、90年代のシンプルでミニマルな空間イメージから考えると、ややプレゼンテーション過多のように思えるが、人の手が掛かっている分だけ、温かさ、親しみやすさ、楽しさ、分かりやすさが感じられた。1970年代半ば以前の売場に大量に立ち並んでいたマネキンは、単なる陳列の道具に過ぎなかったが、ビジュアルプレゼンテーションの構成要素となったことにより、美しいヘアメーク、小物を含めたファッションコーディネートが施され、予め計画されたステージに嬉々とした表情で演出照明のもとに立ち並んだ。中でも、ザ・ステージとかメインステージと言われる空間は、ウインドーには見られない開放感とインパクトを感じさせ、今でも脳裏に焼きついてはなれない事例がいくつかある。
(つづく)

1977年・78年当時の七彩マネキン

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