七彩マネキン物語

第15話...日本女性のからだの美しさをマネキンに。

1984年、デザイナーのヨーガン・レールさんから、ブティック空間のためのマネキン制作の依頼がありました。

「空間にシンボリックに存在するモニュメントとしてのマネキンを」「これまでのマネキンのポーズはわざとらしく不自然。10分間、同じ姿勢で立っていて疲れないポーズを」「日本女性のからだの美しさを表すマネキンを」「今(1980年代初頭)の女性は、ハイヒールは履かない。フラットシューズを履いたマネキンを」等、次々と希望が出されました。その中心を貫く考え方は「あくまで自然であること」でした。検討の結果、「ヨーガン・レール」のハウスモデルさんをマネキンにすることに決定しました。モデルさんの身長は168センチで顔は大きめ。肩幅は狭くいかり肩、からだは扁平。胴の長さに比べて脚はやや太く短め。日本女性のからだの特徴を見事に持ち併せたモデルさんであり、既存のマネキンとは対照的な身体フォルムでした。

そして「ヨーガン・レール」の服はその日本人のモデルさんを実に魅力的に表しました。この時、服の美しさは、人間のからだとの関係において、そのバランスで決まることを学んだのです。わざとらしいポーズでハイヒールを履き、脚の長い既存のマネキンに「ヨーガン・レール」の服を着せると、逆に不自然であることも判りました。

マネキンのポーズ指定は、極めてシンプルかつ自然でした。何れも立像で①左向きで腕を下ろしたポーズ。②右向きで両手を腰に添えたポーズ。③前向きで両腕を後ろに廻したポーズの3ポーズ構成しました。髪型はショートでオールバック、スカルプチュアタイプで作りました。マネキンの素材感と色を決める方法もユニークでした。当時「ヨーガン・レール」のオフィスは、東京竹芝の港のすぐ脇の倉庫内にありました。港が一望できるガラス張りの部屋から海の色や港の情景を眺めながら検討しました。決定したのは積み上げられた砂の色でした。結局、ブティック用マネキンのファーストバージョン仕様の素材感は、プラスティックに自然の砂を混入したものになりました。

「ヨーガン・レール」のマネキンが登場してから、16年の歳月が流れました。七彩はこのマネキンに「LIVE」という品名をつけて現在も販売しています。「ヨーガン・レール」のブティックには1994年に発表した日本人男性モデルをマネキン化した「KOZO」が空間に参加しています。空間におけるモニュメントとしての役割を与えられたマネキンは、その姿かたちを変えることなく、今も鮮度を保ち続けているのです。(つづく)

  • ヨーガン・レール

    コスチューム:「ヨーガン・レール」/1984年

  • ヨーガン・レール

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