七彩マネキン物語

第16話...時代の大波に乗った「REY」シリーズ

「REYシリーズ」は1984年、加野正浩がその時代のファッション感覚と新しい女性イメージをもとに作り出した七彩マネキン史に残る名作です。「REY」は1985年1月、東京・ラフォーレミュージアム飯倉で開催された「七彩展」でデビューしました。以来16年余の月日が流れましたが、現代でも尚、ロングセラーマネキンとして、根強い支持を集めています。前回紹介した「ヨーガン・レール」との共同開発から生まれた日本人マネキン「LIVE」もまた、同じ「七彩展」でのデビューでした。このふたつのシリーズの共通点は、空間を意識したマネキンであり、ポーズが自然体であることです。その後、ポーズが自然体のマネキンは、国内のみならず、世界的な流れとなってきました。

'85七彩展の空間演出モチーフは、林立する北山杉と竹林、そして石庭でした。「REY」のからだには、テキスタイルデザイナーの新井淳一氏協力による、心地よい風合いと色調の布が、多田園江によってピンワークされました。

「REY」は体型が、やや扁平でいかり肩、背筋を伸ばし、主体的に生きるマニッシュな女性の雰囲気を漂わせています。顔は完璧な造形美を表しつつも、メークを変えることによって多彩に変化します。例えば「真っ赤なルージュ」を施すと、クールなイメージにチャーミングさが加わり、マネキンならではの美の世界が創出されます。デビューした年に、当時パルファン・クリスチャン・ディオールのメークアップアーチストであったティエン氏本人が「REY」に施したメーク。さらにはグラフイックデザイナー田中一光氏デザインのハナエ・モリウインドーの「REY」。新宿伊勢丹ファッションストリートでの、ファッションイメージやトレンドに合わせて現場でリアルメークされた一連の展開。ワールド「ビルダジュール」での長期にわたる展開等、数え上げれば枚挙にいとまがありません。これらとは対照的に1990年東京で開催された「ISSEY MIYAKE PLEATS PLEASE」展の「REY」は、全身「イヴ・クラインブルー」に塗装することによって、空間構成の「陰」の要素と位置付けられました。このように顔のみならず、ボディシルエットの美しさと着装感の良さが評価されたことにより半抽象化された表現にも、その真価を発揮してきたのです。

「REY」のように長期にわたって、評価を受け続けるマネキンは、そう頻繁に生まれるものではありません。「REY」以降、数々のヒット作を市場に送りつづけてきた七彩ですが、「REY」以上の評価を得ることは並み大抵ではありません。マネキンは、それ自体の造形的完成度もさることながら、その考え方において、いかに時代が作り出す大波に乗っかるかどうかもまた重要なのです。

  • 「REY」

    「REY」のカタログより

  • ディオールの「REY」

    ディオールの「REY」

  • 伊勢丹の「REY」

    伊勢丹の「REY」