七彩マネキン物語

第17話...女性マネキン作家の活躍

女性のマネキン作家清水凱子(しみずよしこ)さんが処女作を発表したのは1962年(昭和37年)でした。当時マネキン作家は男性であることが、半ば常識化していた状況下で、清水さんの存在は異色でした。しかも処女作が大ヒットとなったPWH271。翌年にも引き続きヒット作PWH298を発表しました。清水さんは最初のマネキンの原型を製作してから30余年間の中で数々のヒット作を世に送り出しました。清水さんは、いつの時代でも、その時代を主体的に生きるファッショナブルな人間像を、女性の感性で作り出しました。1975年代後半は、実在のモデルの顔をFCR技法で型取してつくるスーパーリアルマネキンの時代でしたが、清水さんはこうした新しい手法においても、自分のスタイルを貫き通し、スーパーリアルならではの実在感とマネキン美を表しました。1977年のティーンズマネキン「アミカル」。1978年の「ボーベル」。1979年の「エラン」と3年連続でヒット作を発表しました。

1985年の加野正浩作「レイ」の大ヒットは、清水さんに大きな刺激を与えました。しばらくオリジナルな原型製作から遠ざかっていましたが、「もう一度取り組んでみたい」と、清水さんの心に創作意欲が湧きました。そこで本当に久方ぶりに、すべてイメージで婦人マネキンを作ることににチャレンジしました。その時の本人の緊張感は、想像を絶するものがあったと思います。七彩上町アトリエの回転台に立つ、完成間近の粘土原型を見た瞬間、自分なりのマネキンを作りたいとの清水さんの激しい思いが伝わってきました。粘土原型を撮影し、その写真を示しながら企画会議に提案しました。そして「ぜひとも発表すべき」と上町アトリエで原型を見たメンバーは力説しました。こうして1986年にデビューしたのが「グレース1・2・3・4」です。清水さんは翌年の1987年に「グレース」の弟と称し「ジオ1・2・3・4」」を発表しました。そして1988年にはその妹と称して「リサ1・2・3・4・5」を発表したのです。この3つのシリーズのマネキンのキャラクターは「血縁関係」という点が面白く、実際に「グレース」の顔から男の「ジオ」の顔を作ったという発想は実にユニークです。「リサ」も「グレース」の妹らしく、気品の中にチャーミングさを漂わせるティーンズマネキンです。その後清水さんは1991年に「エリサ・エリザ」。1992年に「マヤ」。このマネキンは、身体造形に対する厳しい視線を感じさせるマネキンとして、先頃開催された「身体の夢」展に採用されました。翌年の1993年に「モカ・モア」を発表。何れも90年代を飾るヒットマネキンであり、8年を経過した今日でも、最新のファッションを身に付けた「彼女たち」と出会うことが出来ます。

現在七彩の東京アトリエには、2名の女性のマネキン作家ががんばっています。一人は今年チャーミングなキャラクターマネキン「MINT」を発表した山下美代子さん。もう一人はパワフルでセクシーな女性をイメージしたリアルマネキン「KATE」を発表した横山八千代さん。どちらも評判がとても良くて、これからが楽しみです。マネキン作りは、女性の仕事としては想像以上に過酷ですが、清水さんが長年築いてこられた、女性の感性が発揮されるマネキン作りを是非とも継承して頂きたいものです。(文:藤井)(つづく)

  • PWH-271

    1962年発表:PWH-271 清水凱子作

  • ボーベル

    1978年発表:「ボーベル」 清水凱子作

  • グレース

    1986年発表:「グレース」 清水凱子作

  • ジオ

    1987年発表:「ジオ」 清水凱子作

  • リサ

    1988年発表:「リサ」 清水凱子作

  • マヤ

    1992年発表:「マヤ」 清水凱子

  • ケイト

    2001年発表:「ケイト」 横山八千代作

  • ミント

    2001年発表:「ミント」 山下美代子作