七彩マネキン物語

第19話...三宅デザイン事務所とのコラボレーション③

「AÛN」展の「フォルム」

ISSEY MIYAKE「AÛN」展は、1988年10月5日から12月31日までの2ヶ月間、パリ装飾美術館で開催されました。装飾美術館で、ファッションデザインの展覧会が開催されることは異例と聞き、1983年の「イッセイ・ミヤケスペクタクルボディワークス」以来のビッグプロジェクトに七彩スタッフは興奮しました。

その時代における三宅一生氏の集大成ともいうべき展覧会のアートディレクションは毛利臣男氏が担当しました。七彩は当時京都造形室長だった大野木啓人氏を中心に、京都造形室がマネキンの制作に関わりました。マネキンは「フォルム」と称し、金属の角棒と線材で形作られた極めて抽象性の強い身体造形でした。コスチュームを身に付ける前の「フォルム」を見て、これをマネキンととらえる人は稀で、人体をモチーフとした彫刻との見方が一般的でした。

「フォルム」はあらかじめ作られたスタジアムのベンチに腰掛けたポーズと、床一面に貼られた人工芝上を歩いたり立ち止まったりするポーズで構成され、頭部、足先、手先のディテールは、現場で自由にアレンジしました。

また「フォルム」には、かたちや素材の面白さのみならず、人と空間をつなぐメディアとして特別な役割が与えられました。空間に佇んでいると、何処ともなく合唱や叫び声が聞こえてきます。その声は空間に拡がり、揺れ動き、一種荘厳な雰囲気さえ漂わせました。実はその発声源は他でもない「フォルム」だったのです。頭部に小さなスピーカーがし込まれていること等、見学者は知るよしもありません。これらの斬新なアイデアから生まれた空間は、明るく健康的なエネルギーに溢れていました。

 見学に来たパリの子供たちは「フォルム」のポーズを真似て、おどけて見せるなど、大興奮でした。大人たちは、イッセイ・ミヤケの独創性溢れるコスチュームと、パリでさえ見ることの出来ない革新的なインスタレーションに満足し、まさにフランスと日本の「あうんの呼吸」を意味するタイトルに相応しい展覧会として、極めて高い評価を与えました。

この展覧会を写真で記録するため私はパリに出かけました。幸運にも「AÛN」展の空間と遭遇出来た一人として今思うことは、「AÛN」展は、今日的テーマである拡張する身体イメージとファッションの関係を示唆する展覧会であったと言うことです。したがって、あの出来事がとても13年前のこととは思えないのです。

(文責:七彩広報担当 藤井)

  • ISSEY MIYAKE 「AÛN」展 の空間

    ISSEY MIYAKE「AÛN」展 の空間

  • ISSEY MIYAKE 「AÛN」展 の空間
  • ISSEY MIYAKE 「AÛN」展 の空間
  • ISSEY MIYAKE 「AÛN」展 の空間
  • ISSEY MIYAKE 「AÛN」展 会場の入口

    会場の入口
    PHOTO:FUJII